社長業超える天命 一滴の水からオアシスつくる

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社長業超える天命 一滴の水からオアシスつくる

2017年06月02日

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 先日マレーシアとタイを訪れました。東南アジアの発展は目覚ましく、行くたびに新たな発見があります。

  例えば仮想通貨の広がり。その利便性から今後、世界レベルで爆発的に普及するのは明らかです。マレーシアでは、仮想通貨で日用品から不動産まで買えるようになっています。日本でも仮想通貨が使えるお店が増えるなど利用環境が整ってきていますが、私が見るところ、使っている人自体、まだまだ少ないと感じます。

  「働き方改革」という言葉もよく聞くようになりました。世の中はすごい勢いで変化しています。変わっているとわかっているけど、実感できない。あるいは感じ取ろうとしない。そのような態度が危ない――最近、強く思います。 


■募る危機感


  私は海外に行く機会が多くあります。夫の家はスウェーデンにあるので、年に数度、同国や周辺の欧州国に行きますし、出身国である中国はもちろん、ほかのアジアの国もよく訪れます。日本から離れるたび、ここではできない体験、発見や刺激があって、得るものがあります。たとえばスウェーデンの空港では何年も前から搭乗プロセスはすでにほとんど無人です。あらゆることが自動化され、驚くばかりです。

  海外での経験を基に将来を考えるとき、変化に対応し経済的安定を得る「持てる者」と、そうでない「持たざる者」の格差が広がり、多くの仕事がそのうちロボットや人工知能(AI)に取って代わられることは、容易に想像できます。今までなかった業態も創出されるでしょう。従来スキルが通用しづらくなる40~50代にとって大変ですが、若い人たちだってそう。これから今までにない、まったく新しい仕事を探さないといけなくなる。変化を恐れず、率先して時代に合わせる勇気を持ったマインドが必要となる世の中なのです。

  ここ何年も、私はもやもやした気分で過ごしてきました。一言で言えば、危機感です。辛口を承知で申し上げると、日本で会う多くの人たちが、のほほんとしているように見えるのです。座して待つだけでは、時代の流れのなかで淘汰されてしまいます。

  日本で人生の半分以上を過ごし、得てきた多くのものへ感謝し、世のため人のため、さらに身をささげたいと願ってきました。募る危機感へ、自分が何かできることはないか。解決法を模索するなか、昨年(2016年)、偶然が重なり、思いがけず機が熟したのです。

  きっかけの詳細は次回に譲るとして、私は、一般社団法人を4月に立ち上げました。その名も「新生アジア」。 


■3つの事業とオアシス思想


  新生アジアは会員制のボランティア組織です。柱となる事業を3つ、据えました。1つは女性の力を生かすためのプログラム。2つめはプラス思考を促すセミナー事業。そして3つめは持続性あるボランティア事業です。

  名前がアジアなのになぜ「女性」か。これは私の実体験に基づきます。日本は中国と比べて、女性の社会進出や役割の度合いがまだ追いついていません。欧州と比べてもまだまだです。人口減の日本で、女性の力がもっと重要になるこのときに、です。

  私自身、電機会社の女性社長なので、取引先などから「技術のことわかるの?」と言われたり、見込み客からは女性だからと契約してくれなかったりという経験をしました。女性というだけでハンディがある、弱い立場だと実感しました。

  一方、女性側の考えも付いてきていないようです。仕事したいのに、残業はしたくないとか、責任を持ちたくないとか、気概や自信に欠けるところがあると思います。

  人のために始める活動なら、女性の自立を応援したい。そのために、考え方を前向きにしてもらって、率先して自ら行動を起こしてほしい――そんな願いから、コンセプトの一つにしたのです。

  人材バンクが一つの具体案です。中小企業の社長の方たちに参加をお声かけしています。慢性的な人材不足に悩む彼らと、働きたいが従来の枠組みではうまく働けない女性会員をマッチングさせる予定です。ゆくゆくは、起業支援もしたいと考えています。

  2つめのセミナー事業は、現在活躍している人たちを招き、その人たちが持つ考え方やアイデアに触れ、学ぶのが目的です。3つめは、会員たちが積極性や専門性を生かして活動できるボランティア事業で、すでにガーナでの井戸掘りに着手したところです。

  会員の方たちには、時代に合った考え方やアイデアを育て、お互い提案して、一人ひとりが持つ得意分野を生かして活動してもらいます。結果として自らも、ほかのメンバーもメリットを実感できれば、きっと息の長い活動になるはずです。

  アジアといっても広いし、理念先行で大丈夫なのか、と思う人がいるかもしれません。欧州連合(EU)を見てください。欧州は古来争いを繰り返してきたため、まとまることが大事だという理念のもと、大国小国合わせていろいろな仕組みを変えました。域内ならどこでも仕事できるし、自国にいるのと同じ感覚で行き来できます。昨今難問は山積ですが、メンバー国と協力し合って解決を試みているのです。これだけ変化が激しい時代ですから、アジアだってそうなる可能性があるかもしれません。

  新生アジアに対する私のイメージは、オアシスです。広大なアジアの地に広がるオアシス。私がまず、乾いた湖を準備します。ここを満たすのは、私一人の力では限られていて、とてもできません。私の考え方に賛同するたくさんの人たちがめいめいワンドロップ、一滴の水を入れることによって青々とした湖ができあがります。彼らはその湖によって潤いの恩恵を受けられるのです。オアシスが形成されるにつれ、人々がもっと集まるでしょう。植物が生い茂り、動物たちも立ち寄ります。オアシスが周りに好影響を与えるのです。

  新生アジアは最初の一歩。私利私欲からではない、真摯な態度でオアシスづくりをしたいのです。当然、活動に人種や国籍、性別は問いません。国の壁、男女の壁を取り払う重要性は、外国人女性として日本で長年仕事をしてきた私だからこそ、骨身にしみているのです。

  新生アジア創設のアイデアが持ち上がったとき、社長業が忙しいし、東京エレベーターという本業に影響を与えたくないとちゅうちょしていたのですが、今ではもう私の天命に違いないと確信しています。目に見えない大きな力に背中を押された気持ちで、私も勇気を出して、人と違ったことをしてもいいと信じて新たな領域に足を踏み出したのです。

  私と一緒にぜひ、オアシスになる湖にするために、一滴の水を入れてくださいね。


読者からのコメント


けいこさん、40歳代女性
新生アジアの会、設立おめでとうございます。世界は目まぐるしく変化しており、そのなかで女性の力が大切であること。危機感が薄れていた自分を反省しています。めいめいのワンドロップが、オアシスになること。馬さんが先頭をきって取り組まれていることが、頼もしく感じられます。財政難、人手不足により介護業界は厳しい状況です。より良い世の中に向けて、励み、取り組んでまいります。次回も楽しみです。

昌美さん、50歳代女性
お久しぶりのプログを拝見し、お元気なご様子でうれしいです。「新生アジア」の創設、誠におめでとうございます! わたくしも賛同します。日本に危機感が無いのは、やはり島国だからではないでしょうか? 日本は先進国でありながら、女性の重要ポストへの進出はまだまだ遅れていると、わたくしも思います。仮想通貨は良く分かりませんが、相場取引なのでしょうか……。これからは、科学が最速で進歩し、人間がそれに必死に追い着いて行く時代になりますので、メンタル的な部分を心配しております。