仕事とビジネスは不平等に再定義される

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仕事とビジネスは不平等に再定義される

2017年10月06日

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 IT(情報技術)の変化の速さには眼を見張るものがあります。ロボットや人工知能が組み込まれたさまざまなサービスが今、爆発的に生まれています。インターネットやスマートフォンの普及が新たな地平を押し開いたのは疑いようがありません。

  夏にスウェーデンへ行ったときにびっくりしたことがありました。私の住む町には、芝刈り機の販売と修理サービスを営む店舗が一つだけあります。芝刈り機を買おうとこのお店を訪れました。すると従来型モデルの展示が少ないことに気づきました。

  店主の自宅はお店の隣なので、ひょいとのぞいたら、なんと彼の庭ではロボットの芝刈り機が稼働中でした。丸い形をしていて、決まった長さに自動で芝を刈る、すぐれものです。あらかじめプログラムすれば、刈る時間や頻度などを指定できます。作業を終えると、自分でベースに戻りチャージします。暗証番号で保護されているので盗難抑止にもなります(盗んでも動かないため)。

  店主と話したら、自分で草を刈るのはもういやだとのことで、導入を決めたそうです。芝刈りロボットを主軸の品ぞろえにして、本人は別のビジネスを始め、そちらに注力しているそうです。数年前から彼が芝刈りロボットを取り扱っていることは知っていましたが、従来型モデルから脱皮して、新事業にシフトしていたことに驚きました。田舎町にもロボットが押し寄せていると実感しました。

  もう一つは行政機関での出来事です。ある書類を準備する必要があったので担当者と話したところ、別の遠い町に問い合わせるため、机にあったモニターをテレビ電話に切り替え、3者通話のモードにしました。遠い町の担当者が該当する書類を送付してくれ、それが目の前の機器から瞬時に出力されたのです。おかげでほぼ待たずに目的の書類を入手できました。

  芝刈りロボットも、役所でのテレビ電話も、日常生活に溶け込んでいました。日本は一部を除き、こうした風景が日常的になっていないと感じます。特に公共サービスについては、複数窓口にあちこち出向いたり、担当者がいないと待たされたりするような仕組みは不便です。マイナンバーが整備されれば改善されるかもしれませんが、効果が感じられるには、まだもう一歩が必要のようです。 


■新しいことはとにかく試す


  何度かこの連載で書いていますが、時代は猛スピードで変化していて、日本もその変化と無関係ではいられません。あらゆる産業が効率化され、必要な人員は少数で済むので、仕事を失う人が必ず出てきます。私たちはこの変化に付き合うしかないのです。

  そのためには旧来のやり方をリセットして、時代に合った新しい技術や方法を積極的に試す柔軟性が必要です。個人でも企業でも、同じです。

  たとえばスマートフォンでの決済や仮想通貨が信頼できず、使っていない人がいたとします。取引の過程でお金を奪われたり、失われたりする懸念はあるでしょう。それでも1万~2万円程度の額でいいから、まずは試す。今、準備することが大事です。そうすれば、いずれ電子マネーや仮想通貨でしか決済できない日がきたら、どうすればいいのかすぐにわかります。

  新しい考え方をしなければ仕事を失い、路頭に迷う人が出るでしょう。何もしないとチャンスに手を伸ばせないばかりか、それがチャンスかもわからない。一方、準備していた人たちはある程度の変化を予測できているので、成功をおさめるチャンスが増えます。

  変化は仕事の再定義をもたらします。仕事の再定義は、すなわち人間が整理されることでもあります。時代に即した生き方をする人々に富と資源が集まり、そうでなければ遠のいていく。仕事やビジネスが平等にゆきわたることはなく、今まで以上に格差が広がっていくはずです。

  逆に考えれば、変化を受け入れアンテナを張って行動すれば、20歳や30歳といった若年層でも大実業家になれるチャンスがあります。今までなら50歳にならなければ到達しなかったようなレベルの成功が、若くても達成できるチャンスが広がる時代なのです。

  私も、自分自身の変化のために、しばらく多忙で足を運んでいなかった異業種交流会に、積極的に参加するようにしました。人と交流し、情報交換をすることは変化の足がかりになります。インターネットやSNSで入手できる情報がうんと多くなったからこそ、信頼できる人たちと交換する情報が貴重なのです。

  過酷な環境では変化する種しか生き残れない。そう肝に銘じて、お互い、がんばりましょう。


読者からのコメント


昌美さん、60歳代女性
いつも馬英華さんのブログを楽しみにしております。私の周りでも電子マネーを使う人は多くなりましたが、まだ仮想通貨のお話は聞いた事がこざいませんし、仮想通貨のお話をしても聞き流されてしまいます。また、先日住民票のコピーを取りにコンビニに行きました所、もうマイナンバーカードに移行され、住基カードでの発行は出来なくなっておりました。私は住基カードの有効期限があと2年もありましたので、住基カードでも発行出来ると思っておりました。結局は、区役所の派出所へ行き、住民票のコピーを発行して貰い、コンビニでも住民票のコピー等が発行出来るよう、住基カードに登録をて貰いました。しかし、住基カードすら持っていない人が大勢おります。誰もが仮想通貨を使い、マイナンバーカードを持つ時代はいつ来るのだろうかと思いつつ、日本は高齢化社会に伴い、マイナンバーカードの無所持や現金派はまだまだ続く事でしょう。