二人っ子政策は日本のためになる

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二人っ子政策は日本のためになる

2015年12月04日

 中国は先日、「一人っ子政策」を撤廃することを決めました。すべての夫婦に第2子の出産を認める方針を示したのです。一人っ子政策は1979年に導入されたので、35年ほど続いてきたことになります。  
 
 この間、中国は経済的に豊かになり、人々のライフスタイルも変わりました。中国の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数)は1.6程度で、日本の1.42(2014年)とあまり変わりません。同政策導入以降、継続的に下がっています。結婚はするけれど、子どもはノー。そういう条件で夫婦になる男女が増えたとも聞きます。  

 一人っ子政策の撤廃は、中国政府の危機意識が強くなってきた表れだと思います。中国が2010年に行った国勢調査の結果、人々が子どもを持ちたくないと考えていることが明らかになったのです。特に農村部に、そう考える人が増えたことがデータで裏付けられたのです。農村では子どもは貴重な働き手ですから、農村部までそう考えている人が多かったのは国が想定していないことでした。  

 何より、子ども1人でも産み育てるのが年々、大変になっていることがあります。これには中国が推し進めている都市化政策が深くかかわっています。  国は農村部の土地を買い取り、大規模な農業の効率化を図っています。農業に携わり続ける農民は一握りで、ほとんどの農民は新たに用意された集合住宅へ引っ越し、その代わり年金をもらい暮らし始めました。農民としての生活が一転、街中でモノを買う、都市部と同じ消費スタイルになったのです。都市型の生活にはお金がかかります。子育てのコストは非常に高くなったのです。


■これからを担う「小皇帝」


   一人っ子政策が及ぼしてきた影響は大きいものがあります。まずは「小皇帝」の出現でしょう。両親と、それぞれの祖父母の大人6人を従え、君主のように振る舞う子どものことです。  
 
 中国の女性のほとんどが働くため、祖父母が子どもの面倒をみます。日本でもそうでしょうが、祖父母はつい、子どもを甘やかします。わがまま放題に育った小皇帝たちは、協調性や忍耐力があまりなく、学校でも友達ができなかったり、先生の言うことをてんで聞かなかったり、さらには周りに暴力を振るったりすることも問題になっています。また、大人からの愛情を独り占めしたいため、親を脅して2人目を断念させる子どももいるとか……。  

 忘れてはならないもう一つの大きな影響は、生産人口が減っていくなか、老いる人口をどう面倒みていくかです。日本ほど介護の仕組みが発達していないので、今はまだ年老いた親は子どもや親族が面倒をみていますが、このやり方はそろそろ限界です。  

 小皇帝の最初の世代は30歳半ばになり、家族を持つ年齢になりました。この人たちの生き方や考え方は中国の今後に影響を与えていくことになります。注意して観察していこうと思います。


■もっと門戸を開いて

 
 一人っ子政策あらため「二人っ子政策」は、長い目で見れば日本にとっていいことだと思います。  今、コンビニへ行くと、レジ打ちをする外国人店員が増えているのにみなさん気づきませんか。名札にある李とか張とかの名前から、「あら、中国人?」と思う若者も多い。  

 思い起こせば、日本に来て3日目にすでに私はアルバイト先を探していました。学費を稼ぎたかったのです。「日刊アルバイトニュース」を買い、あちこち電話をかけました。なかでもコンビニは魅力的でした。当時自給850~900円くらいで、夜間だともう少し高い。問い合わせたところ、「中国人はお断り」。言葉の問題があると思われたうえ、前例もなかったようです。鎖国のような状態で、外国人を雇用するという姿勢はありませんでした。しかし、逆に考えると、私がバイトを断られた90年代直前あたりはまだ、日本人だけでこうした人材をまかなっていたわけです。  

 ずいぶん変わったものだと思います。ここ2年ほどの間、牛丼チェーンやファストフード店が、人手不足でばたばたとお店を閉じた時期がありました。今も慢性的に人手不足のようです。このままでは、外食産業をはじめとして、成長したい日本企業は本当に立ちゆかなくなるときが来るはずです。海外人材の登用や確保が米国などに比べうんと遅れていることは明らかです。  

 在日中国人は現在120万~150万人といわれています。就労や勉学目的で日本に住むことはまだ手続きが面倒で、条件もクリアするのが厳しいため、もう一段の緩和がないと、住みやすい別の国へ優秀な人が流れてしまいます。  

 先進国並みに低い出生率がすぐ上向くとは限りませんが、それでも20年後くらいに、日本に来てみたいと思う若い中国人が増え、今より労働人口減に悩む日本の力強い味方になってくれるかもしれません。もっと働きやすい環境になるよう日本が努め続けるならば、欧米などよりよほど近くて便利なのですから。私が来日した当時からこの20年あまりでも、後輩たちは、日本での生活がしやすくなっているのです。  

 日本に大量買いに来る中国人の消費を狙い、もっと財布のひもを緩ませるような対策を考えるより、「留学や仕事で来て下さい、住むための優遇策もありますよ」とアピールする方が、日本にとって長期的には助かるのではないでしょうか。


読者からのコメント


泉野普久さん、60歳代男性
コンビニではもう顔見知りです。レジに並べばコーヒーのラージカップを出して微笑んでくれます。コンビニは都市生活者のオアシスでありまさに利便の拠点です。彼らのおかげで僕は快適な生活ができている。また親戚同様に7年以上付き合いをさせていただいている家族がいます。優秀で謙虚でとても人間的でなにより明るいんです。政治の話しも普通に出来ます。子供の教育に熱心で、日本の一番いい学校に兄弟とも進みました。大変な苦労だった思います。その熱意の源はやはり民主主義かもしれない。競争の中で130万人の方が日本を選んでいただいたんですね。うれしいです。高齢化社会の問題も、民主主義、自由、平和、人権の日本をたもつことで選んでいただき、一緒になって新しい社会を作っていくようにしたいです。


嘆きの60歳さん、60歳代男性
日中の交流は、日本の平安時代、中国の隋、唐の時代から行われてきた。留学で日本から中國に日本から派遣され、学び、書籍を買い多くの文化、制度を中国から持ち返りました。京都も当時の長安の都を模したものです。京都の街が碁盤の目の様になっているのもそのせいです。その他お茶、豆腐など日本の食生活の基礎になったいるモノも輸入されたものです。又中国からも明治時代の頃に魯迅、孫文、蒋介石など 多くの人が留学に来ました。それ程交流が活発でした。領土問題に端を発し、政治的な関係は緊張したものになっていますが、民間レベルでは交流が続いています。今後も良い点を見つけ交流が必要です。人間が一人で生きていけない様に、国家も一国では世界で、生き残れない。そういうことですね。


太郎さん、60歳代男性
年々、コンビニや飲食店で働く中国人や東南アジアの若者の姿を見る機会が増えてきました。 彼らが働きやすく、住みやすい環境を整備することも大事ですが、思い切って永住できるような施策(移民解禁)への転換も必要ではないでしょうか? 彼らの住居については、平成25年の国交省の調査によれば空室住宅がある分譲マンションが全体の50%以上あり、とりわけ築年数が古いマンションにその傾向がありますので充分に対応できると思われます。 中国も一人っ子政策を転換しました。日本も世界に門戸を開放すべきです。


みっちーさん、30歳代男性
おおむね、ご意見に賛成です。日本の人口減や生産人口の減少に対応するためにも、外国人への長期滞在や永住の障害を緩和してもいいのかなと思います。 ただ、歓迎するのは真面目で、日本社会に迷惑をかけない外国人です。まずは、既存ベースのうえで、日本への投資総額(住宅取得など含め)が7000万円~1億円以上の富裕層にかぎって様子をみてはどうかなと思います。日本経済にプラスになりますし、富裕層が日本で問題を起こす可能性は低いでしょう。